印刷・出版会社で行う「色校正」とは?種類や必要な理由を解説

ニシダ印刷製本 > 自費出版の教科書 > コラム > 印刷・出版会社で行う「色校正」とは?種類や必要な理由を解説

印刷・出版会社で行う「色校正」とは?種類や必要な理由を解説

コラム

Pocket

色校正とは、印刷・製本に入る前に、想像通りの色味が出ているかをチェックする作業のことです。

発色や明度の具合などの事前確認が必要な写真集の印刷などで行われます。

色校正には、本機色校正と本紙色校正、簡易色校正の3種類があり、本機色校正が一番本刷りのイメージに近いものになります。しかし、本機色校正は費用が最も高額というデメリットもあるのです。

この記事では、写真集や料理本を出版する上で知っておきたい「色校正」について解説していきます。

色校正とは?

色校正とは、印刷を行う前に、データの不具合や色の調子を確認するための校正のことです。小説といった白黒の文字ばかりの書籍で行われることはなく、イラスト集や写真集といったカラーページを多く含む本で行われます。

色校正を行う目的は、パソコンモニタの色再現と印刷物の色再現のギャップを認識することにあります。実際の印刷物は、パソコンモニタと同等の色で仕上がることはほとんどありません。

モニタで再現できる色域と印刷の色域は同じではありません。さらに、インクは印刷される用紙によっても、色の明度が変わってきます。同じインクで印刷しても、印刷用紙によって、印刷での仕上がりは異なってきます

モニタで見るものと紙に印刷するのとではかなり違う色になるので、印刷をする前に、色校正を行い、自分のイメージと完成形を近づけていく必要があるのです。

出来上がりに関するトラブルも多いので、対応策もあわせて確認しておくと良いでしょう。こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
意外と怖い自費出版? 実際にあったトラブルから対応策を考えよう

色校正を行うタイミングとは?


色校正を行うタイミングは、デザイン原稿が完成したのちです。本になる予定の原稿データの作成を終えて、完成データを印刷業者に渡したあとのタイミングで行います。

ただし、同人誌や写真集を作るのが初めてで、「モニタと実際の印刷物の色味にどれくらいの差がつくのかを事前に知っておきたい」という場合は、データがある程度完成した段階で、最初の数ページをお試しで色校正することもあるようです。

色校正は、冊子形態ではなく、各ページを両面印刷で一枚ずつ分けた状態(1・2ページ分、3・4ページ分など)で送られてきます。そして、色合いを確認してデータを調整し、納得が行く色味が出るまで、試し刷りとチェックを繰り返して色味補正を行っていきます。

なお、受け取った色校正を見るときは、照明にも気を付けることが大切です。普段はあまり気にしない照明ですが、光にも色があります。白色の蛍光灯では白色が目立って見えますし、オレンジ系の白熱灯で見るとすべての色が赤みがかった色に見えてしまうのです。

色校正は、自分の部屋だけでなく、いろいろな部屋の照明の下で見てみるのがおすすめです。そして、どのような照明の下でも、想定している通りの色に仕上がっているかしっかり確認してみましょう。

色校正の種類

色校正には3つの種類があります。種類ごとのメリットや特徴を確認しておきましょう。

簡易校正・・・急ぎの人、低価格で色校正を行いたい人向け

簡易色校正専用の出力紙、インキ、印刷機械を使用して行う校正です。実際に、製本するときに使う用紙や印刷機を使用しないので、最終仕上がりと校正の色味は多少は異なってきます

【メリット】
・最も低価格でできる
・短納期で仕上げることができる

【デメリット】
・最終仕上がりの印刷物とは色味が異なる
・特に、上質紙や非コート紙を使用する場合は最終仕上がりと校正刷りが大きく異なる

本紙色校正・・・本番と近いイメージで色を確認したい人向け

最終仕上がりで使用する用紙と同じもので試し刷りを行う校正です。ただし、印刷機は、本紙校正専用の印刷機械を使用します。校正のための費用は少々高額です。

【メリット】
・短納期で色校正が可能
・本番と同じ用紙を使うので、イメージのズレが起こりにくい

【デメリット】
・本番の印刷機と色校正機は印刷方式が違うため、ごくまれにイメージの違いが発生する

本機校正・・・金銭的・時間的余裕があって、最終仕上がりとまったく同じ仕上がりを確認したい人向け

最終仕上がりで使用する印刷機、用紙、インキで試し刷りを行う校正方法です。本番とまったく同じ条件で印刷するため、100%に近い再現性があります。色校正と本番で、色のイメージの違いを感じたくない人に向いています。

【メリット】
・本番とほとんど変わらない仕上がりを確認できる
・イメージの違いが発生する可能性はほとんどない

【デメリット】
・色校正の中で一番価格が高い
・紙や機械を準備する必要があるので色校正の中で一番納期がかかる

色校正が必要な理由

色校正を行うには、時間とお金がかかります。そのため、お金をかけてまでする必要がない、と考えてしまう人も少なくないでしょう。

しかし、色校正は印刷物の完成度をあげるためには大切ですし、トラブルやリスクなどを避けるために行う必要があるのです。色校正が必要な理由を確認しておきましょう。

モニタでの色味と完成版の色味はかなり違うから

本の原稿データは、パソコンソフトを利用して作成していくはずです。しかし、モニタで見ている色と印刷物の色は異なることが多いです。

照明の明るさによって色の見え方が異なるので、明るいモニタで映し出された原稿データは、実際には暗めだったりすることもあるのです。

自分のイメージに近い完成品を作るため

色のトーンが少し落ちてしまうだけで、印刷物の印象は大きく変わります。明るくてさわやかな雰囲気を出したかったのに、印刷されてきたものはトーンが暗くて、印象が悪く不健康そうに見えてしまうこともあるのです。

色校正によって伝えたいイメージが再現されているかを確認することはかなり大切になってくるのです。

色によるトラブルを防ぐため

作成したい本が、製品のカタログだったりした場合、色味が違うと大きなトラブルにつながることが多いです。

カタログでは明るい色だったのに、実際の製品は暗めの色だったりすると、商品が返品されたり会社の評判が落ちたりしてしまいます。

色によるトラブルや不利益を防ぐために、色校正で色のイメージをチェックするのは大切なのです。

刷り直しのリスクをなくすために必要

色校正をせずに製本をしてしまうと、「完成した実物がイメージとあまりにも違う」というトラブルも発生します。自身が伝えたいものが伝えきれていない場合は、その本は使い物になりません。

調整をして、再度刷り直しをしなくてはいけません。そうなると、余分な費用がかかってしまいますし、不要な在庫を抱えてしまうということにもつながってしまうのです。

まとめ:印刷物のクオリティーをあげたいなら色校正は必要不可欠

色校正は、モニタのイメージと完成版との間の色のギャップを埋めるために行います。色彩とは繊細なものですから、ちょっとしたトーンの違いでも印象は大きく変わることになってしまうのです。

完成した色味によっては印象や印刷物のインパクトは変わってきます。色校正には時間とお金がかかりますが、印刷物のクオリティーをあげるためには外せない要素です。

「完成した実物がイメージとあまりにも違う」という事態を避けるためにも、しっかりチェックしておきましょう。

Pocket

関連記事

2021-08-17コラム

出版の基本!自費出版の著作権と出版権の考え方と注意点まとめ

著作権は、商業出版している本や漫画につくものと誤解されている方もすくなくありません。しかし、自費出版であっても著作権は著者に発生します。 ただし、出版権は…

続きを読む

2021-08-18コラム

意外と怖い自費出版? 実際にあったトラブルから対応策を考えよう

自費出版を考える人の多くは、本を出版するということに詳しくない傾向にあります。そんな方に、出版社や印刷会社の自費出版サービスは心強い存在です。しかし、「プロに頼…

続きを読む

2024-11-05コラム

グラフィックデザイン講座おすすめ4選。自費出版本をどこまでも自分でこだわって作るために

自費出版本を制作する際には、本の内容だけでなく装丁などのデザインも重要です。 表紙の細部までこだわるためのグラフィックデザインを学ぶ手段として、デザイン講…

続きを読む

2021-08-18コラム

コピー本をコミケで販売したい人必見。作り方やコツを解説

「コピー本」とは、印刷業者を通さずに製本された本を指す用語です。自宅のプリンタなどを使って、原稿データをプリントし、ホッチキスなどで綴じて本にします。 自…

続きを読む