著作権は、商業出版している本や漫画につくものと誤解されている方もすくなくありません。しかし、自費出版であっても著作権は著者に発生します。
ただし、出版権は自費出版をした出版社のものになってしまうことが多いので、電子書籍などとして再版したいときは注意が必要です。
自費出版の著作権と出版権の考え方と注意点を確認しておきましょう。
自費出版の著作権はどうなるの?
自費出版であっても、著作権は発生します。ですので、本の内容を無断で転載されたり公開されたりした場合は、著作権侵害の訴えを起こすことが可能です。
また、2020年に二次創作作品にも著作権が発生するという判決が下されたので、二次創作作品を自費出版した場合も著作権主張をすることが可能です。
著作権の基本の考え方・・・自費出版・同人誌にも著作権は自然発生する
著作権の基本を確認しておきましょう。
著作権とは、表現された作品(著作物)と制作した人(著作者)の権利を守るための法律のことです。知的財産権のひとつで、著作物を創作したときに自然に発生するものです。ですので、特許権や商標権などのように、登録しないと権利が発生しないというものではありません。
著作権は、権利を得るために何の手続きも必要ありません。著作物のうまい下手によって、著作権がなくなるということもありませんから、たとえ3歳の子どもの絵であっても立派な著作物として著作権が発生します。
ですから、当然、自費出版した作品にも著作権は発生します。たとえ、原稿を自費出版依頼する出版社や印刷会社に渡した場合でも、著作権は自費出版本の著者に帰属します。
ですので、著作物を第三者が勝手に利用することはできません。仮に、以下のような行為を行った場合は、著作権を侵害したことになります。
・著作物の文章や写真、イラストなどを著作権保有者の許可無く使用する
・他者の著作物を修正して使用する
・他者のイラストや写真の模写を使用する
・既存のキャラクターを許可無く使用する
自分が自費出版した本に関して、上記のような行為をされた場合は、著作権侵害を主張することが可能です。
注意点・・・二次創作作品の同人誌や自費出版した本の著作権はどうなる?
著作物が創作された瞬間に、著作権は自動的に発生します。著作物を著作権保有者に無許可で転載したり許可なく利用したりしてはいけません。
さて、ここで気になってくるのか、二次創作の著作権はどうなるのか?という問題です。二次創作あるいは二次的著作物とは、ある著作物を元に作られた著作物のことです。好きな漫画を基にして、オリジナルの漫画や小説を書いた場合、この作品が二次創作になります。
この二次創作ですが、二次創作は著作権の侵害にあたり、基本的には違法です。著作物を作者の許可なく改変することは、著作物の翻案権または同一性保持権の侵害となります。
しかし、二次創作の同人誌や自費出版本は多く存在していますよね? これは、二次創作はファン活動に当たるとして、黙認されているからなのです。
あくまで、黙認状態にあるのであって、法律的に許可されている行為ではありません。現在二次創作は法律上グレーゾーンにあります。
二次創作作品にも著作権は発生する!
二次創作作品は、そのもとになる著作物の著作権を侵害している作品です。そのため、二次創作した作品を掲載している同人誌や自費出版した作品の著作権を侵害されても、なかなか抗議をしにくい状態にありました。
自身の二次創作作品を勝手に転載されても、「そもそもこの作品自体が元ネタの著作権を侵害しているのに、自分の著作権は主張するのはおかしいのではないか?」と言い返されることもあり、二次創作作品の著作権は侵害されやすい傾向にあったのです。
しかし、令和2年10月6日に、知財高裁で「二次創作作品にも著作権がある」と認められました。この裁判は、二次創作した同人誌がスキャンされ、Webサイトで無料公開されていたという事案に対する判決です。
裁判所は、二次創作作品にも著作権があるので、無断で公開したことは著作権違反にあたるとして、1,000万円の賠償金を支払うようにWebサイト側に命じました。
判決詳細はこちら▼
令和2(ネ)10018
自費出版の出版権はどうなるの?
自費出版の出版権は、出版社のものになることが多いようです。そもそも出版権とは何かを確認しておきましょう。
基本の考え方
まず、出版権とは、ある書籍を出版する権利のことです。
出版権は、自費出版でも出版社のものになるのが基本となってきます。ただし、私家版と呼ばれる書店流通させない自費出版本の場合は、出版権は作者に発生し、出版社には発生しません。
出版権は、出版契約時にどのくらいの期間結ぶのかを決定します。そして、この契約期間中は、たとえ、作者であってもその本を出版社に無断で出版することはできません。
注意点・・・再版を考えている場合は、出版権を自分で保持する
自費出版の際に、深く考えずに出版権を出版社に渡してしまうことがあるようです。しかし、出版権を出版社が保持していると、自分で再版ができないという事態が発生します。
たとえば、「紙で本を出しものと同じものを電子書籍で再販したい」あるいは、自費出版した書籍が大手の出版社の目に留まって「うちの出版社で再販しませんか?」と声をかけられたとしましょう。
しかし、出版権を保持している出版社が「電子化はやめてください」「他の出版社から出さないでください」と言ってきたとします。すると、出版権が出版社に保持されているので、電子化の話も大手出版社から出す話もボツとなります。
自費出版した書籍を、別の出版社で違った形態で再版したい、と考えている場合は、契約の際に「出版権は自分で持ち続けたい」と相談するようにしましょう。
また、こちらの記事では、自費出版で起こりやすいトラブルや、実際にあったトラブルを紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
意外と怖い自費出版? 実際にあったトラブルから対応策を考えよう
作品作りの基本!著作権で注意しておくべき3つ
著作権を侵害したりされたりしないためにも、著作権で注意しておきたいことを確認しておきましょう。
引用は正当な範囲で行う
著作物は、引用する場合は、著作権所有者に許可を取らずに無断で利用することができます。しかし、数ページに渡って、他者の著作物を引用するのは違反です。引用は正当な範囲内で行うことが必要です。
著作権を侵害しないために、引用をするときには以下の点に注意をしましょう。
・引用する必然性があること
・自分の著作物と引用部分とが区別されていること
・引用する著作物との主従関係が明確であり、自分の著作物が主体であること
・引用した著作物の出所の明示がなされていること
たとえば、出所を明示せずに、他者の評論の一部などを勝手に引用すると、違法となります。
行政機関が発行した資料等の転載も出所を明記しなくてはならない
行政機関が発行した資料等は、その資料の転載を禁止する表示がない場合、自費出版の書籍や新聞、雑誌などに転載することができます。転載に際しては、行政機関の許可を取る必要もありません。
そのため、行政機関の資料は自由に使用しても良いように誤解されがちですが、他の著作物と同様に、出所を明示することが必要です。
出所を明示しなくては、著作権侵害に当たります。
二次創作は黙認されているだけということを理解しておく
最近、二次創作作品の著作権が認められたこともあり、二次創作は合法と誤解している人も増えています。しかし、二次創作は、立派な著作権法違反に該当します。
二次創作のもとになった作品の著作者が「ファン活動の一種として、黙認をしてくれている」だけであり、仮に著作者が訴えれば、二次創作の著作者は罪に問われます。
もしも、二次創作の作品を自費出版・同人誌出版したいときには、あくまでグレーであることを理解し、覚悟を持って、出版をするようにしましょう。
まとめ:自費出版でも著作権と出版権は主張できる
自費出版であっても、著作権は発生します。ですので、自分の本の内容が、第三者によって勝手に転載されたり公開されたりした場合は著作権違反として相手を罪に問うことが可能です。
次に、出版件ですが自費出版の場合も、本を出版した出版社にわたることが多いようです。しかし、出版権を出版社にわたしてしまうと、本を再販するときに自分の判断でできなくなります。
自費出版した本を、電子書籍などで再販する予定があるならば、契約の際に「出版権をわたさない」と主張するようにしてください。