小説は挿絵などがない限り、文字のフォントによって、見た目の印象が大きく変わってきてしまいます。小説のフォントは、執筆ソフトの標準設定のものをそのまま使ってしまいがちですが、小説の雰囲気にこだわりたいのならば内容に合ったフォントを選んでみましょう。
ただし、フォントの中には、商用利用禁止のものや縦書き非対応のものもあるので注意が必要です。
フォントのサイズや行間の広さなどにもこだわって、より良い印象を与える同人誌を作成してみましょう。
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目次
同人誌小説におすすめのフォントと特徴
同人誌小説でよく使われるフォントとしては、以下のようなものがあります。実際の画像もあわせて紹介していきますので、自分の小説に合うものを探してみてください。
游明朝
画像出典:游明朝体ファミリー
Windows8.1以降のパソコンにプリインストールされているフォントです。時代小説が組めるような明朝体をテーマにしていて、すっきりとした印象で読みやすい特徴があります。
Windowsのパソコンを持っていれば、すでに誰もが持っているフォントです。フォントをダウンロードする必要もありませんので、手軽に利用することができるでしょう。
こぶりなゴシック
画像出典:こぶりなゴシック W6 | 書体見本 | モリサワのフォント
字面が小さめで、やわらかな印象の書体のフォントです。2006年にリリースされて以来、とくにエディトリアルデザインの現場で根強い人気を誇っています。
やわらかい雰囲気の小説にあいます。少し癖のあるフォントですが、読みやすいように工夫がされていて、読んでいて疲れません。
A1明朝
とめ、はね、はらいが強調された明朝体です。墨だまりも独特な雰囲気を醸し出し、全体的にミステリアスな印象を与えます。
やわらかな印象と自然な温かみを感じさせる新しい書体ですが、読みやすさにも優れているので、どんな作品にも合うでしょう。
源暎こぶり明朝
画像出典:【フリーフォント】源暎こぶり明朝
源暎こぶり明朝は、普通であることにこだわったフォントです。癖を徹底的に排していて、縦書きで読みやすいように工夫されています。フリーフォントなので、誰でも無料でインストールして使え、個人が創作活動を行うにあたってライセンスに悩むことなく〝自由〟に使用できます。
筑紫明朝
画像出典:筑紫明朝 R | Fontworks – フォントワークス
一太郎2017に付属しているフォントです。インク溜まりのような独特の癖があり、小説らしい雰囲気の出せるフォントです。一太郎保有者がよく使うフォントとして著名です。
フォントは豊富なので、自分の作品に似合うフォントを探してみよう!
以上、よく使われるフォントをご紹介してきました。しかし、フォントは上記で紹介したものだけではありません。パソコンにプリインストールされているものから、フリーでダウンロードできるフォントまで多くあります。
さまざまなフォントを比較し、自分の作品の雰囲気に合うものを見つけてみてください。
同人誌小説で使えないフォントもある?
同人誌小説では、使えないフォントが存在しています。以下の注意事項を意識してみてください。
縦書き非対応フォント
同人誌の小説は、基本的に縦書きで印刷・製本を行うはずです。しかし、フォントの中には横書きでの利用を想定しているものも少なくありません。一見縦書きで使用できるように見えても、記号や英数字が上手く表示されないことがあるのです。
三点リーダー(……)やダッシュ(――)が縦書きできちんと表示できているかを見れば、縦書き対応なのかは確認できます。気に入ったフォントがあれば、三点リーダーやダッシュを打ち込んでみて表示をチェックするとよいでしょう。
商用利用禁止のフォント
フォントの中には、フォントの著作者が商用利用を禁止しているものがあります。
同人誌に値段をつけて売る場合は、フォントを商用利用することになりますので、利用規約に注意してください。
フォントの中には、ダウンロードをするときに「商用利用禁止」の規約が表示されるものもあります。このようなフォントは同人誌で利用すると契約違反の違約金が発生するので、同人誌で使用しないようにしてください。
同人誌小説で使うフォントの決め方のコツ
同人誌小説で使うフォントの決め方のコツは、小説のテーマや内容を意識することです。
フォントにはそれぞれ特徴があり、読み手に与える印象が大きく変わってきます。たとえば、明朝体は固い印象を読者に与えますし、ゴシック体のような丸みを帯びたフォントは優しい印象を読者に与えます。
同じ文章でも、フォントによってページを開いたときの印象がかなり変わってくるのです。
ですから、本の内容がシリアスでまじめなものならば、明朝体などの線がしっかりとしたものを選ぶとよいでしょう。一方、本の内容が軽いものならば、ゴシック体のようなやわらかい雰囲気のものを選択してみてください。
フォントとあわせて、表紙レイアウトの決め方や作り方についてもチェックしてみてください。こちらの記事で詳しく解説しています。
失敗しない同人誌の表紙レイアウトの決め方と作り方のコツ
フォントはサイズにも注意しよう
フォントはサイズ選びにも注意が必要です。
同人誌で小説を印刷するときに、印刷費を節約するためにフォントのサイズを小さくして、たくさんの文字を1ページの中に詰め込んでしまうことがあるようです。
しかし、小さすぎる文字は読みにくいですし、用紙やフォントによっては文字がつぶれて印刷される可能性があるのです。一度紙に印刷してみて、読みにくくないか試してみると良いでしょう。
なお、商業の文庫本のフォントサイズは8.5~9.5ポイントくらいで、商業のB6や四六判では、9~12ポイントで印刷されているので、参考にしてみましょう。
また、フォントのサイズだけでなく、行間の広さも大切になってきます。読みやすいとされる行間は50-75%の間とされていますが、改行の多いものは行間を取りすぎると、白い部分が目立って間延びした雰囲気になります。
一方、改行が少ないものは、行間が狭いと、文字がつまりすぎて読みにくくなります。自分で行間を調整し、読みやすいサイズを探してみてください。
まとめ:自分の小説のテーマや内容を意識してフォントを選ぼう!
小説の同人誌は、フォントが全体の雰囲気に大きくかかわってきます。もしも小説のテーマとは異なるフォントを選んでしまうと、「こんな作品だとは思わなかった」と読者に誤解される可能性もあります。
やわらかい内容の小説ならば、ゴシック体のような丸みのあるフォントがあいます。時代小説のような硬派な内容の小説ならば、明朝体のようなフォントがぴったりでしょう。
自身の小説のテーマや内容を意識して、フォントの中からイメージに近いものを選んでいくようにしてくださいね。ただし、フォントにも著作権があるので、フォントをダウンロードするときには、規約をしっかりと読んで適切に利用しましょう。